低利回りでレバレッジを効かせて規模を拡大し続けるのは危険
表面利回り5%~8%位で、フルローンなど融資比率を100%に近づける不動産経営は、非常に危険です。特に、新築アパートなど、築年数が新しいものほど家賃の下落リスクが高いため、返済期間後半に資金繰りが悪化する可能性が高いです。
新築・築浅アパートは家賃下落速度が速い
新築アパートは家賃を高く設定できます。「新築プレミアム」と呼ばれています。築10年くらいまでは、比較的高い家賃水準で推移するものの、築10年を越えたあたりから家賃水準が下落し始めます。また、築20年~築30年くらいまでが、急速に家賃水準の下落が激しく、一般的に想定されている、1年間で家賃額の1%の下落幅を上回ります。築30年以降は家賃水準の下落が穏やかになる傾向にあります。
減価償却費が切れることによるCF(キャッシュフロー)の悪化
新築木造アパートの法定耐用年数は22年です。築23年目からは減価償却による経費がなくなり、利益が向上し税負担が増しCFが悪化します。
金利負担の低下によるCF(キャッシュフロー)の悪化
返済が進むごとに借入額が減り金利負担が減ります。その結果、経費が削減され、利益が向上し税負担が増しCFが悪化します。
どの程度、収益性があれば、レバレッジを効かせて規模を拡大し続けるのことは可能なのか
レバレッジを効かせて規模を拡大し続けても、資金繰りが困らないのはどの程度の収益性があればいいのか、シミレーションしてみました。
前提条件 築30年 融資割合80% 金利3% 15年
家賃下落速度が緩やかになる鉄骨造り築30年の物件を購入する前提にしました。また、築古で返済が残ることをきらい、返済期間を15年としました。返済しながら賃貸経営するのは築45年くらいが限界かなと思っています。また、融資割合を80%としています。築古物件ですので金利3%としています。物件規模を購入価格5,000万円、2DK×10戸としました。
表面利回り9%の場合
初年度から、年間CFはマイナス50万円と持ち出しが大きいです。やはり返済期間15年では、CFプラスでスタートすることも難しいようです。
表面利回り9%1年目
表面利回り10%の場合
初年度で、年間CFはマイナス10万円。15年目でマイナス60万円以上で、やはり拡大し続ける前提では難しいようです。
表面利回り10%1年目
表面利回り10%15年目
表面利回り11%の場合
初年度は、年間CFはプラス30万円、15年目でマイナス30万円。これまでのCFを貯めておくことで拡大はなんとか可能かなと感じました。
表面利回り11%1年目
表面利回り11%15年目
表面利回り12%の場合
初年度は、年間CFはプラス70万円以上、15年目はプラス7万円。これであれば、規模拡大を続けることは可能であると思います。ただし、所得税の考慮が必要です。
表面利回り11%1年目
表面利回り11%15年目
自己資本比率20%でも、資産を拡大し続けるのは難しい
自己資本比率20%で物件を購入し続ける前提でも、理想は表面利回り12%ですが、11%が拡大を続ける最低ラインであると思います。しかし、市場にはそのような物件はほとんどなく、あったとしても需要がほとんどない地域や、狭小ワンルームアパート、接道なしの融資不可物件などが目に付くでしょう。
自己資本比率を上げて、堅実な不動産経営を進めていくのが現実的な選択であると思います。
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